国立病院機構沖縄病院は今年1月に新病棟が完成し、月から新しい病棟での診療を開始しています。さらに院内に肺がんセンターを設置し、日本がん治療認定機構認定施設として肺がんに特化した医療機能の推進と緩和医療学会認定研修施設として緩和ケア医療のさらなる充実を推し進めています。2016年症例の院内がん登録数は397件であり、そのうち193件(48.6%)が肺がんでありました。肺がんに関しては他の施設と比較して悪性腫瘍に占める割合、登録数とも多いのが特徴です。
当院は日本呼吸器内視鏡学会指導医1名、専門医3名、日本癌治療認定機構暫定教育医2名、日本臨床腫瘍学会暫定指導医1名、日本癌治療認定機構認定医6 名(うち指導責任医4名)、日本呼吸器学会指導医3名、日本呼吸器学会専門医6名、呼吸器外科指導医2名、呼吸器外科専門医5名、日本緩和医療学会暫定指導医1名、日本緩和医療学会認定医1名、放射線専門医1名、病理診断科専門医1名を擁し、常に最新の知見を取り入れながら診断・治療に取り組んでいます。治療方針に悩む症例は呼吸器外科・呼吸器内科・緩和医療科・放射線治療(琉球大学医学部附属病病院)・病理診断科のそれぞれの専門医でキャンサーボードを開催して、治療方針を決定しています。
当院は呼吸器外科(専門医育成)基幹施設に位置づけられています。当院の切除率はおよそ50%で、Ⅰ期の多く(80%)は胸腔鏡手術を行っています。手術症例のうち80歳以上の超高齢者がおよそ1割を占め、Ⅰ期および高齢者に対しては低侵襲手術(胸腔鏡手術)を心がけています。局所進行肺がんに対しても積極的に手術を行い、気管支形成術、血管形成術を多用した機能温存手術を多数行っています。
当院における肺がんに対する薬物療法単独、もしくは薬物療法を含む治療の新規患者数は66例です。当院ではEBUS-TBNA(超音波気管支鏡下針生検)を駆使し、積極的に診断をつけるとともに癌遺伝子変異(Driver mutation)、耐性遺伝子、PDL1 の発現の検索結果から個々の症例に応じて治療方針(化学療法、TKI、免疫チェックポイント阻害剤)を立てる個別化医療とも言える症例が増加しています。さらには化学療法と放射線治療との併用で治療効果が高い症例も数多く経験しています。従って、患者さん個々の特徴に応じた治療(手術・化学療法/TKI/ 免疫チェックポイント阻害剤・放射線治療、あるいはそれらの組み合わせ)で最も効果的でかつQOL(生活の質)を維持しながらの治療成績向上をめざしています。がん性胸膜炎に対する温熱化学療法や骨転移に対する薬物・放射線療法で症状・疼痛コントロールも積極的に図っています。
緩和医療科においては暫定指導医と認定医の2人を中心に疼痛や精神的不安に対してはメンタルサポートを含め、早期にチームで治療に当たることによって効果を上げています。
国立病院機構沖縄病院は、呼吸器内科・呼吸器外科・放射線治療専門医が連携して治療にあたる肺がん診療の核となる専門施設として、地域の医療機関と連携を図りながら沖縄県の肺がん治療成績のさらなる向上に努めたいと思っています。
独立行政法人国立病院機構沖縄病院
病院長 川畑 勉
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