沖縄県におけるがん診療連携拠点病院3施設と地域がん診療病院2施設、沖縄県推薦病院13施設において、平成28(2016)年1月1日から12月31日までの1年間に登録対象となる腫瘍の種類* に該当するもののうち、入院・外来を問わず、自施設において、当該腫瘍に対して初回の診断が行なわれた腫瘍である。初回の診断とは、自施設における、当該腫瘍に関して初めての、診断及び/ 又は治療等の診療行為のことを指し、入院・外来を問わず、自施設において、当該腫瘍について初診し、診断及び/ 又は治療等の対象となった腫瘍が登録対象となる。
がん診療連携拠点病院等での院内がん登録においては、登録の対象を、全国がん登録と同様に、『国際疾病分類- 腫瘍学第3版(一部改正2012)』(ICD-O-3)における形態コードの性状コードが2(上皮内癌)もしくは3(悪性、原発部位)のものとする。ただし、以下の腫瘍においては、例外的に登録対象とする。
頭蓋内に原発した、いわゆる「脳腫瘍」のみならず、髄膜・脳・脊髄および中枢神経系に発生した腫瘍に関しては、原則的に良性であっても、登録対象とする。中枢神経系腫瘍での登録の対象となる部分は、ICD-O-3 の局在コードが以下のものである。
C70.0, C70.1, C70.9, C71.0, C71.1, C71.2, C71.3,C71.4, C71.5, C71.6, C71.7, C71.8, C71.9, C72.0,C72.1, C72.2, C72.3, C72.4, C72.5, C72.8, C72.9,C75.1, C75.2, C75.3
ICD-O-3 の局在コードで8936/1 となる性状不詳および8936/0 となる良性の消化管間質腫瘍(GIST)は、原発部位にかかわらず、登録の対象とする。
死因統計に用いられる「疾病、傷害および死因統計分類提要ICD-10 準拠」に従い、ICD-O-3の形態コードで8440~8479の範囲の性状不詳腫瘍で、卵巣に原発するものは、性状コードが「/1」であっても、登録の対象とする。具体的な卵巣に原発した登録対象の形態コードは下記のとおりとする。
8442/1(境界悪性漿液性のう胞腺腫*)
8444/1(境界悪性明細胞のう胞腫瘍)
8451/1(境界悪性乳頭状のう胞腺腫*)
8462/1(境界悪性漿液性乳頭状のう胞腺腫*)
8463/1(境界悪性漿液性表在性乳頭腫瘍)
8472/1(境界悪性粘液性のう胞腺腫)
8473/1(境界悪性乳頭状粘液性のう胞腺腫)
* ICD-O-3 の表記は「漿液性のう胞腺腫、境界悪性」「乳頭状のう胞腺腫、境界悪性」
各施設における登録対象は、登録を実施する自施設での新規の診断患者または他施設で診断後に自施設を初診した患者であり、初発例、再発例を含む。また、治療を行わない経過観察例も含まれる。従来、1入院1登録などの形であっても、集計などの際に1腫瘍1登録に変換できることを許容していたが、平成28(2016)年1月1日以降の新規診断症例の登録からは、1腫瘍1登録となるように登録することとする。1腫瘍1登録の原則に基づき、同一患者に複数のがん病巣が存在し、それらが臨床的・病理学的に独立した“ がん”と判断された場合、多重がんであるとする。多重がんの判断に際し、十分な情報が診療録・病理報告書に記載がない場合、あるいは症例の数え方に明白な問題が存在すると考えられる場合、主治医の判断またはSEER2004、2007の定義を参考に登録を行なう。登録済みの同じがんについて当該施設で治療中に再発した患者については登録対象ではないが、同じ患者が同じがんで複数のがん診療連携拠点病院を受診した場合は、異なる施設において同じ患者の同じがんが登録されている可能性がある。
本院内がん登録全国集計では、提供されたデータは匿名化後のデータであるため、重複の整理は行わない。
院内がん登録集計の収集方法は、平成29年度に国立がん研究センター(以下「国がん」という。)へ、データ提供を行った、沖縄県におけるがん診療連携拠点病院3施設と地域がん診療病院3施設、沖縄県推薦病院12施設の計18施設より、施設長の許可のもと、データの提供を受けた。なお、全国合計値については、「国立がん研究センターがん対策情報センター がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016年全国集計報告書」より引用した。
提出項目は、「がん診療連携拠点病院等院内がん登録標準登録様式2016年版」において定義された標準登録項目とした。
主な項目の定義と注意について以下に記載する。このほかの項目の定義については、がん診療連携拠点病院等院内がん登録標準登録様式2016年版をご覧いただきたい。
院内がん登録の目的の一つとして、病院のがん医療の評価のための基礎的資料を提供することがあげられる。そのためには、病院のがん診療実態を他施設と比較する必要があり、どのがん症例を含めるのかを識別しておく必要がある。この症例区分の項目は、当該腫瘍の診断および初回治療の過程に、自施設でどのように関係したかを判断するための重要な項目である。本報告書のデータ収集対象は、症例区分に関わらず全症例としている。
国際比較のため、UICC(International Union Against Cancer)の定める病期分類方法に基づき、何らかの治療が行われる以前に診断されたステージを指す。わが国の一般的な臨床現場で使用されている癌取扱い規約に基づくステージとは若干異なる部分がある。肝臓については、取扱い規約のステージも合わせて標準項目として登録することとなっている。なお、前医で治療がなされており治療前のステージが不明の場合などは「不明」に分類されるか、該当無のままで登録される。
手術が行われた患者に関して、術後に検体が提出され病理学的に算出されたステージを登録する。手術が行われなかった場合には手術なしで、術前に化学療法や放射線療法などが行われた場合には、手術前の治療の影響が想定されるため、術後病理学的ステージは適応外として登録される。定義上は、原発巣に対する切除術が行われ、断片が陰性であるような治癒的な切除が行われた場合に本ステージが評価できるとされている。
この定義に従えば、現状の院内がん登録の項目と定義項目番号730「外科的・鏡視下・内視鏡的治療の範囲」において、原発巣切除(腫瘍遺残なし)で本ステージを評価することが可能である。術後病理学的ステージは、腫瘍やリンパ節を顕微鏡的に観察して得られるステージであることから、治療前ステージと比較して、治療開始時点でのがんの状態をより正確に表しているといえる。
一般にがん治療とは、1)原発巣・転移巣のがん組織に対して行なわれた治療と、2)がん組織に対するものではなくても、がんによる症状の緩和・軽減のために行なわれた特異的な治療(吻合術などの外科手術)の両者を指す。ある治療が、1)がん組織に対して何らかの影響(がん組織の増大傾向を止めたり、切除したり、消失させたりする行為)、あるいは2)症状の軽減を及ぼすことを意図して行なわれた場合、たとえそれが、根治的ではない、もしくは期待する治療効果が得られなかったとしても、がん治療として定義される。しかし、院内がん登録におけるがん初回治療は、運用上の必要等から、1)の治療、すなわち、当該腫瘍の縮小・切除を意図したがん組織に対する治療のうち、当該腫瘍に関する最初の診断に引き続き行なわれた、腫瘍に対する治療とする。
最初の診断に引き続き行なわれた治療の範囲は、治療計画等に記載された治療とし、経過観察が計画された場合あるいは治療前に死亡された場合は経過観察という行為を初回治療としてみなして扱うこととする。なお、この範囲が不明確な場合は、病状が進行・再発したりするまでに施行されたか、あるいはおよそ5ヶ月以内に施行されたものを初回治療とする。
従来の院内がん登録標準登録様式では、がんに伴う症状の改善を意図して行なわれた治療も初回治療に含めることとされてきたが、2016年版からは、がんそのものの縮小・切除を意図した治療のみが初回治療の対象となった。このため、従来、初回治療の対象となっていた症状の緩和等を意図して行なわれた特異的な症状緩和的な治療を含む症状緩和的な治療は、初回治療に準ずる形で計画され、かつ自施設で実施された場合に限って、データの継続性の担保と診断早期からの症状緩和的な治療の実施状況を把握する目的で、別途「790症状緩和的な治療の有無(自施設)」において登録される。なお、症状緩和的な治療の有無は、従来の「特異的」症状緩和治療の範囲に限定されず、診療行為として緩和ケア加算が算定されている場合や投薬・処置等の医行為が対象となる。
肉眼的視野下の外科的手技による病巣切除術を「外科的治療」とする。子宮頸癌の円錐切除術(病巣がすべて切除できた場合)は、外科的治療に含めるが、前立腺癌の去勢術は内分泌療法として、胆嚢癌での腹腔鏡下胆嚢摘除術、肺癌での胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術は鏡視下治療として登録される。
皮膚切開を加えるなど、自然開口部(口唇、鼻孔、尿道口、肛門、膣口、乳管等)以外から挿入された光学機器の視野を用いて(光学機器の視野下で)行なわれる病巣切除術を「鏡視下治療」とする。また前立腺癌でのTUR-P、胃癌・大腸癌での粘膜下層剥離(ESD)は内視鏡的治療として登録される。
自然開口部(口腔、鼻孔、尿道口、肛門、膣口、乳管等)から挿入された光学機器による視野を用いた病巣の切除等の観血的治療が行なわれた場合を内視鏡的治療とする。膀胱癌のTUR-BT、胃癌・大腸癌での粘膜下層剥離術ESD など。
X線やγ線等の電磁放射線、あるいは陽電子線や重イオン線等の粒子放射線による腫瘍の縮小あるいは消失を目的とした治療を放射線療法とする。原発巣対する放射線治療だけではなく転移巣に対する放射線治療も含まれる。重粒子線・陽子線・中性子線などの荷電粒子線を利用した治療、イブリツモマブチウキセタンのように、分子標的薬と放射性同位元素の両方の作用を狙った治療I-131 内容療法等の内照射療法、密封小線源による治療を含む。
アルキル化薬をはじめとする狭義の抗がん剤の他、分子標的薬などの薬剤を用いた、腫瘍の縮小あるいは消失を目的とした治療をその投与経路は問わず、化学療法とする。イブリツモマブチウキセタンのように、分子標的薬と放射性同位元素の療法の作用を狙った治療、肝動脈化学塞栓療法のような血管塞栓術も併用した抗がん剤投与、ニボルマブなど、免疫療法薬とされる分子標的薬の薬物治療も含む。
特定のホルモン分泌を抑制することで腫瘍の増殖を阻止する目的で、薬剤投与あるいはホルモン分泌器官の切除により、腫瘍の縮小あるいは消失を目的とした治療を内分泌療法とする。前立腺癌における除睾術、ステロイド単剤での薬物治療も含む。
当該腫瘍の縮小・消失を目的に腫瘍に対して行なわれた初回治療のうち、外科的治療、鏡視下治療、内視鏡的治療、放射線療法、化学療法、内分泌療法のいずれにも該当しない治療をその他の治療とする。例えば、免疫療法、肝動脈化学塞栓療法のような血管塞栓術、レーザー等による腫瘍そのものを焼灼する光線焼灼術や光線力学的治療、ラジオ波などの電子波を用いた腫瘍焼灼術、腫瘍病巣にエタノール等の壊死性薬物を注入するPEITなどの治療がある。
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